ペインクリニック外来
- ペインクリニックとは:目的と役割
- 主な適応疾患(何を診てもらえるか)
- 主な治療法:神経ブロック注射とは
- 安全で正確なブロックのための手法
- 痛みの治療における当科の基本姿勢
- 帯状疱疹について(ワクチン接種のご案内)
ペインクリニックのご紹介:痛みの専門治療
1.ペインクリニックとは:目的と役割
ペインクリニックは、英語の「Pain(痛み)」と「Clinic(診療所)」を組み合わせた言葉です。欧米では広く普及している「痛み」を専門とする診療科であり、「痛み」に焦点を当て、主に痛みを抑えるための注射(神経ブロック注射)や、内服薬を用いて治療を行っています。痛みに向き合い、症状を改善していくことで、患者さんご自身が快適で質(QOL:生活の質)の高い毎日を送れるようになることを一番の目的にしています。
2.主な適応疾患(何を診てもらえるか)
外来で扱う疾患は、帯状疱疹による痛み、足や腰の痛み(腰痛症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症など)、手腕の痛み、背部の痛み(肋間神経痛など)、顔の痛み(三叉神経痛など)の治療を行っています。
痛みの性状や部位と神経学的所見から得られた診断をもとに神経ブロック治療を中心に治療計画を立て、鎮痛補助薬やオピオイド鎮痛薬を適宜併用しながら治療を進めます。
【ご注意:扱っていない疾患】
小児の痛み、内科系の腹痛、基本的にがん性疼痛や外傷などは扱っていません。また、完全予約制ですので初診時の緊急対応は行っておらず、患者さんの症状によっては診察のみとなることがあります。
3.主な治療法:神経ブロック注射とは
神経ブロックは、痛みの原因となっている末梢(まっしょう)神経や、血管の調節に関わる交感神経節(こうかんしんけいせつ)の周囲に、局所麻酔薬やステロイド(抗炎症薬)などを注射する治療法です。 この治療により、痛みを一時的に遮断して、炎症止めによる痛みを軽減し、交感神経ブロックにより血行を改善することで、つらい痛みの緩和を促します。
神経ブロックの4つの効果
この治療法によって、主に以下の4つの効果が得られ、痛みの治療に多角的にアプローチします。
- 知覚神経の遮断(除痛効果)
- 局所麻酔薬により、痛みを感じる信号を伝える知覚神経の働きを一時的に遮断します。これにより、強力で即効性のある除痛効果をもたらします。
- 炎症の軽減
- ステロイドなどの抗炎症薬が、痛みの発生源となっている神経周囲の炎症を効果的に鎮めます。
- 血行の改善
- 交感神経を遮断することで、その支配下にある血管が広がり、血液の流れ(血流・血行)が改善されます。この血行改善は、痛みの原因物質を洗い流し、痛みの悪循環を断ち切る上で非常に重要です。
- 痛みの診断
- 神経ブロックは、治療だけでなく診断的な役割も担っています。注射により一時的に痛みが消失するかを確認する「診断的ブロック」によって、その神経が痛みの発生源となっているかを判断します。
神経ブロック注射のより進んだ治療
さらに、より長期的な痛みの軽減を目指し、高周波熱凝固装置を用いた特殊な治療を行うことがあります。 具体的な方法としては、痛みを伝える神経の働きを一時的に変性させることを目的とした高周波熱凝固法や、針先の温度を42°Cに設定し、神経の近傍を正確に2~6分間温めるパルス高周波療法などがあります。これらの治療は、神経への刺激を調節することで、長期にわたる痛みの軽減を目的としています。
痛み以外の疾患に対する神経ブロック治療
また、痛み以外の疾患であっても、神経ブロック注射による血流改善効果が期待される星状神経節ブロックによる突発性難聴や顔面神経麻痺などの治療も行っています。他にもボトックス注射による顔面・眼瞼けいれんなどの治療も行っています。
4. 安全で正確なブロックのための手法
当科では、神経ブロックを中心とした治療を様々な手法で行っています。
A. エコーガイド下法(超音波診断装置を使用)
超音波診断装置(エコー)を用いて体内の様子をリアルタイムで確認しながら、より安全で正確なブロック注射を行っています。
B. ランドマーク法(体表の目印を基準にしたブロック)
C. 透視下ブロック(X線透視装置を使用)
5.痛みの治療における当科の基本姿勢
「痛みは記憶」という側面があります。 そのため、長期間痛みを抱える患者さんは、身体活動に対して恐怖心や不安を感じる傾向があります。慢性の痛みは、一つの原因で起こるのではなく、複数の要素が複雑に絡み合って成立するものです。具体的には、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、術後の症状など、元の疾患による身体的な原因はもちろんあります。しかし、これに加えて、精神的な不安や情動(感情)、生活習慣による筋力低下といった様々な要素が複合的に作用することで、現在の痛みが形作られています。 痛みによる恐怖心や不安感は、身体活動の低下へとつながります。その結果、筋力低下などが生じ、痛みがさらに増幅する悪循環を形成します。
神経ブロック治療は、局所麻酔薬を用いて神経の過剰な興奮を鎮静化し、痛みのレベルを一時的にでも下げることを目的としています。これによって、先に述べた痛みの悪循環を断ち切るきっかけを作ります。 しかしながら、注射による治療だけでは十分ではありません。この悪循環を断ち切るためには、患者さんご本人が運動やリハビリテーションに積極的に取り組んでいただくことが必要不可欠です。 したがって、当科の治療は、医療者と患者さんの共同作業が要となります。
クリニックの特徴と連携
当院では、リハビリテーション・スポーツ整形・骨粗鬆症外来・鍼外来(東洋医学外来)など多数の痛みに関連した診療科と連携して痛みの治療を進めることが可能です。 ブロック治療や薬物療法で痛みを和らげ、患者さんご自身がご自宅での運動やリハビリを円滑に行えるようサポートしていきます。
6. 帯状疱疹について(ワクチン接種のご案内)
ペインクリニックでは帯状疱疹のワクチン(予防接種)を行っています。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが原因で起こる病気です。 このウイルスが、疲れやストレスで体の抵抗力が落ちたときなどに再び活動を始める(再活性化する)ことで発症します。 体の左右どちらか片側に、ピリピリ、チクチクとした強い痛みと一緒に赤い発疹や水ぶくれができるのが特徴です。 また、発疹が治った後も、痛みが長く残ってしまうことがあり、これは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる神経痛です。
日本人の成人の9割以上が、すでにこのウイルスに感染しており、体内に潜んでいるといわれています。そのため、誰もが帯状疱疹を発症する可能性があります。 特に、50歳代から急激に発症率が高くなり、帯状疱疹の患者さんの約7割は50歳以上の方となっています。
帯状疱疹ワクチン接種のご案内
当院では、帯状疱疹の発症予防や、万が一発症した場合の重症化を防ぐためにワクチン接種を行っています。
(注意) このワクチンは、すでに発症した帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛の治療薬ではありません。
※当院では、市区町村の公費助成制度の対象外となっております。
制度を利用した接種はできませんので、あらかじめご了承ください。全額自費での接種をご希望の方は、お電話または受付にてご予約を承っております。
接種の対象者
原則50歳以上の方
【シングリックスのみ】 令和5年6月26日より、「帯状疱疹の発症リスクが高いと考えられる18歳以上の方」も対象となりました。医師が接種の必要性を認めた場合、50歳以下(18歳以上)でもシングリックスの接種が可能です。ご希望の方はお気軽にご相談ください。
現在、当科では以下の2種類のワクチンを取り扱っています。費用や効果の持続期間に大きな違いがありますので、比較してご検討ください。
帯状疱疹ワクチンの比較
| シングリックス筋注用 | 乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」 | |
|---|---|---|
| ワクチンの種類 | 不活化ワクチン | 生ワクチン |
| 接種回数 | 2回(2ヶ月あける) | 1回 |
| 投与方法 | 筋肉注射 | 皮下注射 |
| 予防効果 | 90%以上 | 50~60% |
| 持続期間 | 9年以上 | 5年程度 |
| 副反応 | 接種部位の痛み、腫脹、発赤、筋肉痛、全身倦怠感 | 接種部位の痛み、腫脹、発赤 |
| 1回あたりのワクチン接種費用 | ワクチン代 21,350円+初診料 3,300円(初回のみ) | ワクチン代 8,800円+初診料 3,300円 |
| 長所 | ・予防効果が高い ・持続期間が長い |
・1回で済む ・値段が安い |
| 短所 | ・痛い ・2回接種が必要 ・値段が高い |
・免疫が低下している方には接種できない ・予防効果が高くない ・持続期間が短い |
| 接種できない方 | ・明らかな発熱を呈している方 ・本剤でアナフィラキシーを起こしたことのある方 ・妊娠中や免疫抑制状態の方の接種は可能となっておりますが、当科では副作用の対応が難しいため、お受けしておりません。 |
・明らかな発熱を呈している方 ・抗がん剤、副腎皮質ステロイド剤及び免疫抑制剤などの治療を受けている方 ・HIV感染などの免疫抑制状態の方 ・妊娠していることが明らかな方 ・本剤でアナフィラキシーを起こしたことのある方 |
- 【接種対象者】50歳以上の方
- ※基礎疾患(持病)があり定期的に注射や投薬治療などを受けている方は、まずそちらの主治医に予防接種の可否をご相談していただいた上で、予約の電話をお願いします。
- ※予防接種を行う前提で予約をお受けしていますが、不明な点などは接種前の診察時に医師にご相談下さい。診察後、接種を行わなかった場合は診察料のみいただきます。
- 初診料 3,300円(税込)
- 再診料 1,540円(税込)
- ※ワクチンには限りがございますので、予約でお受けしております。
- 電話又は受付窓口にお問い合わせください。(TEL 049-238-8283 3階受付直通)

